児童手当の所得制限について

改正児童手当法が3月末に成立しました。

支給額が制限されるラインは、夫婦と児童二人のサラリーマン世帯で「年収960万円」とされています。

しかし、「年収」というのは、給与所得のサラリーマンの方にのみ適用される表現であり、事業所得等を有する「自営業者」の方はどうなるのか、リーフレット等を見ても詳しい説明がありませんでしたので、調べてみました。


児童手当法

 第5条

 児童手当は、前条第1項第1号から第3号までのいずれかに該当する者の前年の所得(1月から5月までの月分の児童手当については、前々年の所得とする。)が、その者の所得税法に規定する控除対象配偶者及び扶養親族(施設入所等児童を除く。以下「扶養親族等」という。)並びに同項第1号から第3号までのいずれかに該当する者の扶養親族等でない児童で同項各号のいずれかに該当する者が前年の12月31日において生計を維持したものの有無及び数に応じて、政令で定める額以上であるときは、支給しない。


児童手当法施行令

(法第5条第1項の政令で定める額)第1条

 児童手当法(以下「法」という。)第5条第1項に規定する政令で定める額は、同項に規定する扶養親族等及び児童がないときは、622万円とし、扶養親族等及び児童があるときは、622万円に当該扶養親族等及び児童1人につき38万円(当該扶養親族等が所得税法に規定する老人控除対象配偶者又は老人扶養親族であるときは、当該老人控除対象配偶者又は老人扶養親族1人につき44万円)を加算した額とする。


(法第5条第1項に規定する所得の額の計算方法)第3条

 法第5条第1項に規定する所得の額は、その所得が生じた年の翌年の4月1日の属する年度分の市町村民税に係る総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額等の合計額から8万円を控除した額とする。


2 前項に規定する市町村民税につき、次の各号に掲げる控除を受けた者については、当該各号に掲げる額を同項の規定によつて計算した額からそれぞれ控除するものとする。

1.地方税法第314条の2第1項第1号、第2号又は第4号に規定する控除 当該雑損控除額、医療費控除額又は小規模企業共済等掛金控除額に相当する額

2.地方税法第314条の2第1項第6号に規定する控除 その控除の対象となつた障害者1人につき27万円(当該障害者が同号に規定する特別障害者である場合には、40万円)

3.地方税法第314条の2第1項第8号に規定する控除 27万円(当該控除を受けた者が同条第3項に規定する寡婦である場合には、35万円)

4.地方税法第314条の2第1項第9号に規定する控除 27万円

(法、施行令とも、一部省略してあります)


…ややこしい書き方がしてあるなあと思いつつ。

検証してみることにしましょう。


夫婦と児童二人のサラリーマン家庭で、父親の年収が960万円の場合。

給与収入が960万円のとき、給与所得控除額は216万円なので、総所得金額は960万円-216万円=744万円となり、さらに、児童手当法施行令第3条により8万円を差し引いて、736万円が「所得の額」となります。

それに対して、支給が制限される「政令で定める額」は、622万円に114万円(38万円×3人・妻と児童2人)を加算した736万円です。


というわけで、給与所得者の場合は、前年の年収が960万円を超えた場合、児童手当法第5条により、「支給しない」方に該当することとなります(現行では、所得制限に該当した場合でも、特例給付として、「当面の間」ひとり当り5,000円/月が支給されます)。


で、これを事業所得や不動産所得の方に当てはめてみると…。

①総所得金額(所得税確定申告書第一表の「所得金額」の「合計」欄)-8万円

②622万円+(控除対象配偶者・扶養親族・児童の人数の合計×38万円)

こういうことかな?


①>②ならば、支給制限の対象となります。

ただし、小規模企業共済や医療費控除、障害者控除等の適用を受けている方は、①の総所得金額から、これらの控除額を差し引くことができます。


確かにこれだけのことをリーフレット等で「簡便に」説明するのは難しいかもしれない…。

でも、「年収960万円」という記載のみでは、自営業の方には、完全に説明不足になってしまうのではないでしょうか?

改正のついでに、法構成ももう少し分かりやすくすれば良かったのに…。